第11回 歩行指導と靴の関係

何故、シューズメーカーは、このような歩き方を提唱したのでしょうか。

それは靴の構造にあります。多くの靴は形や強さを維持する為に、シャンク(靴の内部にある強度な芯材)を使用しています。

他にもフィット感を高める為に内底の足裏の数か所を盛り上げた構造にしています。その結果、足底腱の運動を妨げてしまい、足裏からの姿勢保持力や足関節の運動が十分にできなくなってしまいました。その結果、無理やり股関節から脚部を振った歩きを提唱している訳です。

更には、踏み蹴る動きや足の持ち上がりが難しくなる為に、靴が転がり易いように、靴の爪先部分を上に持ち上げた構造の靴まで主流となってしまいました。

残念ながら、この様な足趾を使い最後まで蹴る事の出来ない構造の靴が、ランニングシューズとして世の中にまかり通っているのが現実です。

 

特に内底を盛り上げた構造の靴は、姿勢保持の支点となる足裏の三支点(踵、拇趾球、小趾球)の保持反応を止めてしまった事から、靴の中で足が滑り動く現象が起こり、それを止める為に靴の周りの立ち上がりを強化し、内底の幅を狭くして、アッパー部分の足への巻き込みを強くする構造に変化してきています。残念ながら、この全て構造が足部の機能低下を引き起こしている物であり、半世紀以上前に行ったビジネス上の誤った構造が、本来的な人間の機能を疎かにしたことから始まっている「つくろい」と考えています。

 

有名スポーツプレーヤーが脚部の筋痙攣や膝関節痛でプレーを棄権する場合や引退に追い込まれる例は沢山あります。その多くは、靴による障害や本質を知らないトレーナー達によって起きているのが、現状ではないでしょうか、

 

有名な医師が、テレビで発言する誤った話やアドバイスは元より、地域でも医者や治療家が本質を理解せずに患者に伝えている事も多いと感じています。

人間にとって大切な歩行方法や身体の歪みを治す運動などは、基本的な身体の構造や履物の構造を知る事で理解でき、本来のアドバイスができると思っています。

 

このコラムを読んでいただいている皆様には、もっと人間の身体や履物についての知識を理解していただき、世の中の過ちを一緒に正して頂きたいと願っています。

bana