2018年 第4回コラム足部アーチの役割について
足部アーチの役割について
近頃は、医者だけでなくスポーツショップに行っても、靴屋に行っても、足部のアーチ形状の説明やインソールによるサポートの必要性をお客様に説明している場面に出会う事があります。店員さんの中には、シューフィッターの資格(民間資格)を持っている方も沢山おられると思います。
どなたも基本的な説明として、アーチ形状が崩れると偏平足や開帳足、ハンマートウ、浮指、外反母趾、内反小趾、等が発生し、身体の機能低下に繋がるとお客様へ説明しています。
そしてお客様に提案しているシューズやインソールは、アーチフィットタイプの物で、足裏のアーチを押し上げる事で、足骨のアーチ形状を形成するタイプです。
シューフィッターの方々に「足裏のアーチ形状はどのようにして出来ているのですか」と質問することが有ります。決して意地悪ではなく、どの程度の理解で、消費者に物を薦めているのかを単純に確認したいからです。大半の答えは、「人間が元々ある足部の骨の形状です」とか、「足部の関節がアーチ型に形成されています」だからその形をしっかりと作る必要があるのです。このような答えが大半で、優等生の様ですが、全く、答えになっていません!
足裏のアーチ形状は、足部の靭帯群の引張りによって形成されています。だから日本名では、「足弓」といいます。この靭帯から作られる足部の張りや支持力が、足裏から身体を支えて、骨盤を誘導する事で姿勢の維持は勿論、運動時のバランス保持や推進力を引きだす役割があります。
この姿勢保持や推進させるときの下肢の筋活性が、第二の心臓と言われている循環機能で、心肺への循環機能を補助している役割も担っています。
私は、アーチの形状よりも、大切なのはアーチを形成している支点の保持反応や靭帯の活性した活動が重要と考えています。アーチフィットタイプでは、靭帯の動きや足部全体の関節運動を止めてしまう事から姿勢保持力の低下は元より歩行運動への弊害や循環器の働きや自律神経にまで影響を及ぼしてしまいます。
足の疲れをほぐしてリラックスする時に、昔から青竹ふみという方法があります。足底腱の緊張に対して、指圧的に弛緩させるためのものです。仮にこの青竹踏みの上に一日いる事ができますか? 弛緩により気持ちが良くても、長時間の靭帯に対しての刺激は体のゆがみを引き起こし、この状態を継続すると過度の足底腱膜炎になる可能性もあります。
基本的なアーチの役割は、姿勢保持や衝撃吸収・推進力といった役割とそれを行う事により、得られる心肺機能に対しての循環促進補助効果です。
アーチとは、一般的に3つのアーチの事を言っています。踵と拇趾球を結ぶラインの内側縦アーチ、踵と小趾球を結ぶラインの外側縦アーチ、拇趾球側と小趾球側を結ぶラインに出来る横アーチとなります。
この各アーチの役割を知る事で、足元のアーチではなく各支点の支点保持反応や運動時に足底腱が初動運動を行っている意味合いが解ると共に、アーチ形状は結果として現れるもので形を求めるものでは無いことが分かると思います。
「内側縦アーチ」このアーチの役割は、拇指側に掛った荷重を踵骨に押し戻す役割があります。小趾球側の靭帯の背屈運動と合わせて足部の外返しを行う事で、足部の外反と共に体の内側方向への回旋を行う事も出来ます。更にこの踵骨へ戻る伸展運動は前足部に荷重している時に行う事で踏み蹴り運動を行っています。また拇趾を引き上げる運動を行う事で、足部の背屈が起こり、前脛骨筋による踵から拇趾方向への骨盤の前移動が行われています。
この拇趾球への支点保持を弛緩させる事でも、緩みによる足関節や膝関節の前側又は内側への移動が起こります。
「外側縦アーチ」このアーチの役割は、小趾球側に掛った荷重を踵骨に押し戻す役割があります。小趾球への押し返しを継続する事で足部の内反と伸展が行われています。この小趾球側の支点保持が体の立位における基底面での外側への重心移動を止める役割もはたしていられます。この小趾球への支点保持を弛緩させる事でも、小趾球側への足関節や膝関節の緩みによる移動が起こります。
「横アーチ」このアーチの役割は、片足時のバランス保持や骨盤の回旋運動、特に初動運動に関わっています。拇趾球と小趾球間を結ぶ靭帯は無く、このアーチ形状は足部の内返しと外返しの運動を行う事により、拇趾球と小趾球の支点保持反応により結ぶ中足骨部がアーチ型の形状となったものです。このアーチの働きが弱まると歩行時のバランス保持は勿論、前後への足関節や膝関節の弛緩による移動が大きくなります。変形性膝関節症や腰痛症に起因する大切なアーチと言えます。
アーチの基本となる三支点、踵骨、拇趾球、小趾球この支点保持反応や対応能力を高める事、そしてこの三支点を結ぶトライアングルゾーンに距骨が位置する事が重要です。支点保持によるアーチの反応がある限り、距骨位置は安定した状態となり、カメラの三脚と同様のしっかりした身体の土台を形成してくれます。
そして、この各アーチの支点保持力と靭帯の運動によって立位時の骨盤位置の前後左右への調整(静的バランス)や運動時の骨盤の足部の姿勢保持(動的バランス)がコントロールされています。
結論は、アーチの形状ではなく、各支点保持力を高める事、足部の伸展運動は勿論、内返しや外返しといった素足の感覚が衰えない様に意識する事が、現代人にとって重要な事と考えています。