第9回 活動時の姿勢保持筋の弛緩について
私は過去に16年間、ウィンタースポーツメーカーに勤務し、用具開発や販売促進活動に携わってきました。その時代の用具変化、特にインソールの形状変化は目を見張るものがあり、フラットなインソールから徐々に足裏のフィット感が重点となり、素材や形状にも様々な変化が表れてきました。その新しい構造のインソールに可能性を求めて、数万円の出費をするアスリートは多かった事を記憶しています。
この頃から、従来あまり見られなかったブーツ内骨折やアキレス腱断裂、中足骨(特に拇趾球や小趾球)の変形等も多く発生していました。
スキーブーツの中で足にフィットするインソールがブーツとの一体感を作り、より強い運動に導いてくれると思っていたのですが、実際にはフィット感との代償にバランス感覚が弱くなり、足裏からの初動で始まる重心移動ではなく、上体からの荷重移動や膝を傾けて運動を起こすと言う初歩的な誤った操作まで行われていました。
インソールによりスキーブーツ内での弛緩が起こったスキーヤーは、更にブーツとの一体感を求めてスキーブーツのバックルを締めて運動を行っていました。
今になってみると、より一体感を作る為に足が締め付けられるほどにスキーブーツのバックルを締めていた状況で、とても危険な事をやっていた訳です。
人間の体、特に体幹は、驚くほど簡単に緩んでしまいます。体幹に係る上体の関節を動かすと即座に体は弛緩状態となります。首を回しても、肩を回しても、身体は弛緩した不安定な
状況におかれます。恐らく、確認できる方法が限られているために、このような現象は、ドクターも体育学者も知らないことだと思います。
その前にご自身の体で、体幹とか、体幹部の強さとかを感じたことがあるでしょうか?
腹筋や背筋などの筋肉を硬直させて作る体幹では、只の運動筋の緊張で、体幹や体軸を感じるどころか、筋疲労や傷害の原因となってしまいます。