第10回 靴の話
バランスの悪い靴・ローリングの強い靴
現在、日本の靴市場では、意識的にバランスを悪くした多くの靴が販売されています。
靴底が丸い形状をした靴や、内部を柔らかく不安定な素材にした靴など、姿勢保持のために行われる筋運動で代謝効果を高めて、ダイエットや健康づくりに役立てようと考えられた靴です。
でも残念ながらアメリカでは、過大広告として訴訟となりました。
結果、この効果が立証できず、メーカーが多額の賠償金額で敗訴したそうです。
このような不安定な靴は、バランスボールでの運動と違い、日常的に使用すると筋弛緩と無駄に偏った筋緊張の繰り返しとなり、身体の歪みをひどくしてしまいます。
きれいなスタイルや歪みのない体は、不安定な足元にすることや無駄な姿勢保持運動から築くことはできません。
もともと誰でも左右どちらかに重心があり、その骨格による体軸が形成されているため、この状態でどのようにバランスを取っても所詮、歪んだままの姿勢保持であり、筋力も同様に偏った筋肉となるわけです。
このような靴を履いていると、脂肪の燃焼効率を高めるどころか、膝関節や骨盤への負担が大きく、痛みや凝りといった身体ストレスだけでなく、高齢者が使用すると転倒や疲労骨折の危険性も心配されます。
きれいな姿勢やヘルシーな身体は、しっかりと安定した靴で体を支えてこそ、姿勢保持筋による正しい姿勢管理が行われて作られる身体です。
さらに、重力に対して体の歪みが少ないまっすぐな整った姿勢ほど、少ない姿勢保持筋で立っていられるということです。
ですから、ダイエットなどを目的として不安定な靴を使用していた方も、姿勢を安定させて整える方法に切り替えられる方が、安全で早道かもしれません。
次に、ローリングの強い靴は前後バランスを取るために腹筋や背筋を使用しています。
筋力を高める効果はあるものの、前後への姿勢保持反応が遅れるために危険性が伴います。
歩行時にローリングによる靴向きと脚部の股関節運動による膝の向きの違いから下肢にねじれ運動が発生し、膝関節に負担がかかります。
さらに理想とする腰を軸とした歩行ではなく、腰そのもののバランス保持運動が行われるため、過度な筋疲労や腰痛の引き金にもなります。
さらに問題は、足部の踏み蹴り運動が行われなくなることです。
靴底のローリングにより、足首の曲げ伸ばしや後ろに向かっての踏み蹴りがなくなり、継続使用していると、素足でのつまずきや足元の血行不良となることが危惧されます。
それは靴により転がるような歩行となるために、正しい足部やふくらはぎを活用した歩行ができなくなるためであり、足部のアーチ運動と下肢の筋肉運動の低下は、心肺機能や循環器の働きを補助できなくなるため、さまざまな疾病・疾患の原因にもなりかねないということです。
世の中にたくさん出回っている靴や、テレビで話題となっている靴がすべて良い物で安心できる靴という「常識」はありません。
メーカーの巧みな広告宣伝や流行に踊らされて、その商品を手に入れることで満足感は得られるかもしれませんが、危険で不健康な靴を使用することで、これから先の人生に苦痛や体の歪みと杖が待っているとしたら…ぜひとも回避してください。
世の中の誤った「常識」を「良識」を持ってぜひ見破ってください。
そして、本当の健康な身体で、杖を必要としない体を築きましょう。
下駄やサンダルを履いたことがあると思いますが、それを思い出してみてください。
鼻緒のある履物は、歩く時に足指でつまんで歩きます。
足裏がジャンケンのグーとパーを繰り返し行っていたわけです。
歩くことで自然と心肺機能を補助する足裏からの運動ができていたということです。
昔からある履物ほど単純な構造であり、足裏のアーチ構造を活かした健康に良い履物が多いです。
ご自分の足に合った長さや足囲のある靴で、つま先が上に上がっていないタイプの靴。
さらに靴の中で足が自由になるような、フィット感と称した凸部のないタイプの靴が良いでしょう。
将来も健康な姿勢で安心した生活を送るためにも、三点支持によるB-TRインソールを道具として活用し、足部からの健康姿勢管理とスポーツや美容、健康づくりを楽しんでください。
そして、足病や体の歪みを持たない家族(一族)を築いてください。