第5回 「テーピング、3本指・5本指ソックス」

次に「3本指・5本指ソックス」について、常識となっている使用方法と現実の状況について説明します。
「3本指・5本指ソックス」は基本的に外反母趾・内反小指・撥ね指・ハンマートウなどの足指の改善や血行促進の為に使われています。
各足指が離れて動きが自由になる為に、バランス保持運動や末端神経まで活性させる効果を持っていると思います。

然しながら、足裏の各アーチが整っている状況で使用するのであれば、大きな効果を期待できるのですが、三つのアーチのどこかが弱いとソックスを使用する事で、横アーチまでが広がり易く、前方向へのバランス保持が弱くなり、足指への負担は逆に多くなってしまいます。
スポーツや様々なシーンで指を開く感覚が好まれて使用されていますが、現実的には、ソックスだけの活用は、横アーチを開き、開帳足となってしまう事を御存じでしょうか?
徐々に、拇趾球から小趾球に掛けての反り返りや肉厚を感じるようになり、中間部分にタコやマメが出来る方も居られます。
横アーチの機能低下は、同時に内外の縦アーチにも関係し、片足での左右への踏ん張りや前方向への突っ張りが徐々に出来なくなっていきます。
結果、膝関節や股関節に負担が多くなるケースと更に足指での前方向への踏ん張り対応が強くなり、ハンマートウとなるケースが現れ易くなります。

一般的には、日本人は段広甲高が多いと言われています。
小さい足で前後左右のバランスを保持していた事、正座などの座敷生活から足部の内がえしが常に行われていた状況にあり、足部の内転(爪先が内向きとなる状況)、回外(足の甲が身体の外に回る状況)が習慣化していたと思われます。
この動きは、外側アーチを弱くし、内側アーチがハイアーチになり易い運動でもあり、このような幾つかの要因から段広甲高が多いと言っても過言ではないと考えています。
この段広甲高の改善にも、「3本指・5本指ソックス」がよく使われていますが、実際には更に段広となり、上手く使われていないのが現実です。

外反母趾等の根本的な対処とは、身体の重心位置の改善や歩行時の足の向き、その足の向きに対しての荷重通過ライン、そして一番大切な足裏の三ヶ所のアーチの同時活性が改善されない限り、解決とはならず、例え足指の向きや症状が、一時的に回復しても、持って生まれた骨格と重力からまた同様の問題が発生するでしょう。

現実的には、姿勢や荷重位置、歩行矯正をしてくれるオーダーメイドインソールを使用する事が早道ですが、足長や足囲に合った、足指に無理のない履き物を使用する事も絶対条件です。
また、各アーチを活性出来る三点バランスインソールを使用しても、「3本指・5本指ソックス」の効果を十分に引き出す事は可能です。

ソックスの活用効果は、アーチを作る為の物ではなく、各アーチの機能が正常な状況にあってこそ、生かされる物です。
足部が活性されると足の幅や長さ、足囲は、各アーチの稼働状況と重心位置によって変化してきます。更に足部の適正な運動が高まる事によって、足の長さや足囲に、指の形状、下肢にスリムな変化が起きてきます。
そして、足裏からの姿勢保持が自然に行われる事で、無理のない、少ない姿勢保持力で安定した健康姿勢を維持する事が可能となります。