第11回 「2011 学会発表抄録」
【考 察】
地球上には重力(万有引力)があり、人間の体は常に地球の中心に引かれている、そして重力によって押しつぶされる身体を支持足の基底面で踏ん張って、押し返すことによって立っている。
重力は身体の真下に向かい常に掛っているために、体軸または骨格に歪みが有ると、体軸の歪みによる身体バランスの崩れが起こり、姿勢保持のために必要以上の筋力で保持しなければならない。
このことが筋肉痛や関節痛の原因となるばかりか、身体の歪みが酷くなると、杖や介添えが必要となる。
遺伝的な要素と生活習慣により骨格が形成されるが、この骨格が歪む原因として、筋疲労や加齢等による筋力低下によって姿勢保持が困難となって生じる場合と履き物による慢性的な事由によって生じる場合が考えられる。
筋疲労や筋力低下は過度な動きを行わないことと適度な運動量を維持することで有る程度の姿勢保持を継続していくことが出来る。
しかし履き物による慢性的な事由で起こる歪みは靴業界の根本的な履き物に対しての意識改革がなされないと難しい分野である。
一般的に普及している履き物やインソール(中敷)は、世界のシューズメーカーが足底板の理論を基にフィット感と衝撃吸収性を求めてきたことに端を発している。
足部や足弓の整形治療に使用されている足底板は足弓形状の劣化や損傷を補うため、足裏の形状に合わせて持ち上げている。
この理論を基に作られている一般的な履き物が、かえって本来有るべき各足弓の上下運動や衝撃吸収能力、循環機能、身体バランス保持力の妨げとなっている場合がある。
足裏の各足弓は柔軟に上下動を行うことにより、身体のバランス保持は元より、下肢の循環機能を補助する役目を果たしている。
しかし、現在普及されている大半の履き物やインソールは各足弓部分が持ち上がっているために、足弓の上下運動の妨げになっているばかりか、内側縦足弓部分の高さや硬度が堅い場合など、足底筋膜炎や中足骨損傷を引き起こしている場合もある。
理由は、このような履き物やインソールでは足裏の接触面を使った面でのバランス保持となり、足弓運動が鈍化し、筋反応・姿勢保持意識に遅れが出てしまうことが原因といえる。履き物は流行や素材の開発により、華やかで身体にフィットした物が多くなったが、逆にそのことが原因で足部障害を引き起こしている場合もある。
特に今流行りのバランス保持を売り物にした履き物は根本的な土台を作ることが出来ないために、筋疲労と将来的な歪みの原因となる場合が考えられる。
本来的な履き物は、人間に課せられた重力の中での二足歩行の原点に立った考え方から正しい歩行や筋負担の少ない姿勢保持の追及を目的にしなければならないが、残念ながら現実はビジネスを優先した、ファッション性・ダイエットや代謝効果といった流行に便乗した不安定な履き物やインソールが主流となっているのが現状である。