2019 第1回 コラム「正しい歩き方」の理論 1

人間だからこそできる二足歩行。この進化の過程で、四つ足動物だった時の高い踵の位置が下がって着地しました。理由は、つま先立ちだけで長時間歩く事や片足立ちでの姿勢を保持する事が難しかったからです。

 
コラム2019

踵が着地した事により、足部には、踵骨、拇趾球、小趾球による三点支持が形成され、片足立ちに安定した土台を確保する事ができた訳です。でも、単純に足裏に骨による三点支持が出来てもそれだけでは姿勢をコントロールする事は出来ません。

 

路面の変化や傾斜地にも対応する為には、三点支持部の支持力を自動調整する機能が必要となります。支点の支持力は、拇趾球、小趾球の押し返し運動に強弱を加える事や左右の足部が連動した動きを行う事で骨盤を前後・左右・回旋といった動きを行っています。そして、立位での姿勢保持や移動を伴うスポーツの初動運動が、全てここから始まっています。この支持運動を起こしているのが足部の靭帯群から始まる筋膜リレーションによる伸展や弛緩動作です。

 

立位での姿勢保持は元より、スポーツ時の初動動作を起こしている足部の靭帯群は、人間の立位における土台であることは間違いありませんが、骨盤の位置や向き、傾斜を形成しているのも足部の靭帯による支点保持の三次元的な土台によって行っています。結果、立位の姿勢が出来ている訳で、骨盤の左右への軸移動や体幹の傾き、回旋等が、座位になっても同様に現れます。

 

シューズメーカーの誤った構造によって、足部の機能を十分に活用できないシューズが世の中に現れて、約30数年経つと思います。ソールや内底が単純なフラット設計から、よりフィット感を求める事で高機能性(実は退化)とハイプライス化を狙いとしてきています。

 

この事が、足部の靭帯の動きを損なうばかりでなく、人間本来の様々な機能までも低下させてきています。運動を止められた足部は本来の動きを制約されることから、脚部の弾むような踏み蹴りからの脚部の引きあがりが無くなり、重心の移動と共に理想とする差し足、抜き足といった脚部の動きも出来なくなってしまいました。

 

重心の移動と共に歩行を行う事が難しくなった誤った構造のシューズでは、歩行する際には、重心移動ではなく股関節から脚部を前に振り出して、踏み蹴る事ではなく、前足を弛緩させる事で、重心を前に乗せていく移動となっています。この運動に危険が潜んでいます。