第8回 骨盤と背骨のエクササイズ

第8回 骨盤と背骨のエクササイズ

骨盤と背骨の関係を説明する時に、よく斜面を横切って歩く時の姿勢を想像して頂きます。
例えば、右足が高くなった傾斜を横切って歩く時に右の脚部が曲げられることは勿論ですが、上体も斜面に対して垂直ではなく、日常同様に重力に対しての鉛直上になるように無意識にバランス補正を行っています。

人間は、常に足部から骨盤位置を築き、更に背骨が骨盤の前後左右の位置や傾斜に対して、バランス補正運動を無意識に行いながら姿勢を形成しています。通常は軸足側の骨盤位置が低く、逆足側の骨盤が高くなっている事から高い方に向かい腰椎、胸椎、頸椎の順番で、バランス補正を行っています。

骨盤と背骨の関係は、身体の体幹となる部分で、理想的には横から見た時の骨格がS字曲線となって、衝撃吸収や頭部の重さを支えています。しかし、現実的には骨盤の前後位置や左右位置、前後傾斜や左右傾斜の度合いによって、腰椎や胸椎は姿勢保持の為に、先ずは骨盤の高い方向に傾きます。骨盤の前後位置や前後傾斜の度合いによっては、S字曲線ではなく、猫背体型や反り腰体型となります。また、左右位置や左右傾斜の度合いによっては、無意識に胸椎がバランス補正の為に、再度、逆に傾きを修正して姿勢を築いている場合もあります。

人間には、遺伝による基本的な骨格形状が数種類あります。正面から見た時の骨格形状のイメージをアルファベットで説明すると、右足側に骨盤と軸が位置して、左足側に上体が傾いた「C字型体型」、左足側に骨盤と軸が位置して、右足側に上体が傾いた「逆C字型体型」、「C字型体型」から上体の横移動または逆傾斜によるバランス補正が行われている「逆S字型体型」、「逆C字型体型」から上体の横移動または逆傾斜によるバランス補正が行われている「S字型体型」、右足側に骨盤と軸が位置しながらも右足側の骨盤が高く、右足側に上体が傾斜している「右傾斜体型」、左足側に骨盤と軸が位置しながらも左足側の骨盤が高く、左足側に上体が傾斜している「左傾斜体型」などがあります。

自身の基本的な体型を知っている事は元より、無理の少ない骨盤位置や傾斜、上体の自然な姿勢保持感覚を養う事が、将来に向かっての姿勢改善や疾病予防、介護予防に役に立つことは、当然と言えます。綺麗な姿勢やいつまでも自分の力で歩く事の出来る生涯をおくる為には、少しでも早い段階からのケアや姿勢改善が望まれます。

基本的な理論を知る事により、足部からの反応を高めて、理想の骨盤位置を築かせる事が求められます。生涯、歩き続ける事ができる安定した健康姿勢を求めて、各部位の運動能力を落とさないで、尚且つ、弱った方向への押し返しや強いバランス保持力を養っていく事が理想です。

姿勢改善の為に行うエクササイズや運動指導は、必ず、回旋、側弯、前後傾斜の順番で骨盤の
修正から行います。骨盤位置の誘導と背骨の誘導を同時に行う事も可能ですが、基本的には、全て
足元から始まり、徐々に上に上がっていきますので、運動能力を引き出して、理想の位置や向き、傾斜角度を指導していく事で、無意識の姿勢保持力を引き出す事が重要です。
骨盤のエクササイズ
1 回旋力を高める
立位で両足を腰幅位にして、つま先を真直ぐ前に向けます。ここからゆっくりと左右に腰と上体を回旋させます。最初は、骨格形状の関係と余計な所に力が入る関係から上体に揺れが起きますが、リラックスをして上体の重さを足裏に感じることがポイントです。
この事で実は、足裏の靭帯の初動によって身体が動いていることを感じると思います。
ゆっくりと足の裏を感じながら、足の裏によって回旋動作を徐々に、早めていきます。
身体が揺れないように真直ぐな軸を作りながら回旋力を高めます。揺れない回旋が、理想の軸を築くために、鉛直で綺麗な姿勢に改善することに直結します。

2 前後左右への移動力を高める
足の裏から行う前後左右への誘導は、バランス保持力や姿勢改善に必要な下肢の筋力に
関係します。この運動も勿論、足部の運動で行います。腰幅程度に立った姿勢から、
骨盤位置をゆっくりと前に出します、次に足部の力で骨盤を押し返しながら後ろ側に誘導します。
この前後運動を何回か繰り返した段階で、次に左右への骨盤移動運動を行います。この運動も足部の力によってゆっくりと行う事が基本です。

3 バランス保持力を高める
2で前後左右の移動を感じられたら、次には骨盤が体の軸から、どこまで遠くを回旋できるかに挑戦です。
筋力の衰えと関節や靭帯などの硬直から骨盤が可動できる範囲は徐々に少なくなると言われています。足元から骨盤を離しながら、小さく円を描く動きから、徐々に大きな円を描く事で、バランス保持力を高める事が可能となります。

背骨のエクササイズ
1 回旋力を高める
骨盤を正面に向けたまま、上体を左右に回旋します。腰椎と胸椎の境目から回旋が始まりますが、骨盤後傾や猫背が強い場合には上体だけが回旋する事が難しくなる為、この様な骨格形状の方は、少し骨盤の前傾を意識して上体の回旋を行います。

2 前後左右への移動力を高める
前後へのエクササイズは、頭部の前後移動によって行ってください。両腕を体の後に持って行き、前に向かって首をどんどん伸ばして頭部が前に行けるだけ移動します。
次に,両腕を前に出して頭部を後ろに引くように下げます。顎をしっかりと引き、行けるところまで反り返ってください。上体の背骨の曲げ伸ばしを柔軟に行う事がポイントとなるエクササイズです。左右への移動は、両腕を横に開き交互に引き合う動きを行います。
この動きもゆっくりした動きで行う事により背骨への負担を軽減せせる中で、動きを高めていく事が狙いです。

bana